カナダで発見した「ポジティブ・シンキング」の使い方

生きていく上でも職場でも、ポジティブなメンタリティは重要だと言われています。ポジティな思考こそ、明るい未来を拓く。常に明るく、上機嫌でいて、ネガティブな思考に陥らない。ポジティブ思考の良さは、多くの皆さんが認識されていることだと思いますが、カナダでは、日本とは少し違うポジティブな発言や振る舞いに接する機会が多く、今回はその点について書きたいと思います。

ネガティブな発言は意地でもしない!

数ヶ月前、私の職場が新しいオフィスに移転。新職場は自分専用のデスクがなく、好きな席を選んで働く、いわゆるフリーアドレスのオフィスです。日本で勤務していたころから、自分の席がある、ということが当たり前であり、引っ越し前のオフィスも、自分のデスクやロッカーが固定された環境だったので、果たしてフリーアドレスの職場にどれくらい馴染めるのかとても不安でした。

不安に思ったのは私だけでなく、カナダ人同僚たちも、新たなオフィスを喜び、「毎日、違う社員と隣り合わせに座るなんてエキサイティング」と言ってはいるものの、不安そうな顔は隠せません。

そして、新しいオフィスに引っ越し。モダンな家具やおしゃれなミーティングスペースが随所に設置され、やっぱり新しいオフィスは良いものだ、と私も同僚たちも興奮気味です。新環境について社内会議を行っても、ネガティブなことを言う社員は全く存在せず、口々に「最高だね」、「効率が高まるよ」と話します。

ところが、数ヶ月が経つと、固定のデスクがないために、落ち着いて仕事ができず、また、期待したコミュニケーションの活性化ですが、意欲的に歩き回って話をしない限りコミュニケーションの機会がむしろ減ってしまう結果となり、作業効率が落ちて、社員がストレスを貯めている様子が垣間見れるようになりました。

それでも、私が質問をすれば、カナダ人たちは「毎日、来るのが楽しいよ」とか「接点が少なかった人と話をできるチャンスが増えるね」などと、ポジティブな発言を続けます。

盛ってこそのポジティブ表現!

また、ある時の朝礼で、社のトップが、現在の業務状況を報告していました。ただその内容が、実際よりもかなりオーバーに良い話になっており、私が不安になって、あんな言い方をして誤解を産むのでは、と確認をしたところ、「誰も傷つかず、かつ、みんなが自信を持ち、前向きな気持ちになる嘘であれば、話は盛った方が良いじゃん!」と、してやったりの笑顔で返事が。

これらのことから私が感じるのは、カナダ社会が脅迫的なまで(?)にポジティブでいることを職場で求めていることです。

何か意見を求められた時にネガティブな発言をすると「仕事ができない」、「意欲が低い」と思われるのです。先の新オフィスの例で言えば、「新しい環境を受け入れられない=フレキシビリティーのない人材だと思われる」という心配から、本音はなかなか口にしません。このあたりは、本音と建前の国と言われる日本以上で、日本の方が率直な意見を言うことに対して、オープンな気がします。

また、2つ目の朝礼の例で言えば、大勢の社員にむけてのメッセージは、大げさまでにポジティブな表現を使い、エネルギッシュで自信あふれるリーダーシップを見せます。ある事実を伝えるにしても、よりポジティブに響くワードや言い方、言い回しに細心の注意を払うのです。そして、ネガティブな本音は個別に伝達します。

子育てにおけるポジティブの使い方

仕事環境だけでなく、子育てにおいても、自己肯定感の記事で書いたように、子供にポジティブな言葉を掛けるのはとても重要だと思います。

ですが、先日見たテレビ番組によると、子供へのポジティブな声がけにも注意が必要で、米国スタンフォード大学による子供の褒め方の実験によると、賢さを褒められた子供の90%は「自分が頭が良いって事を守りたい」が為に、簡単な問題を選ぶ傾向があり、対して、頑張りを褒められた子供は、90%がより難しい問題に挑戦するそうです。

また、「頑張った」と褒めると成績が30%上がるが、「頭が良い」と褒めると頭の良い自分でいる為に難しい問題を回避する為、成績が20%下がったそうです。

ポジティブは柔軟に

ポジティブ思考や言動が、職場や子育てにおいても、良い結果をもたらすことにつながる、ということには大いに賛成しますが、ポジティブな態度や表現も、度合いと伝え方次第だと感じます。わたしの職場での経験は強制的なポジティブな感じで、無理が高じると、不自然さは否めないでしょうし、冷静なコミュニケーションが必要な場も多いかと思います。

日本でも、ポジティブ思考や言動は多く見られますが、まずは事実に基づくことが重要であり、大げさに伝わることによる事実誤認の悪影響やリスクを心配するケースが多いかと思います。

日本とカナダのどちらが良いか悪いか、という話ではありませんが、ポジティブのあり方について、お国柄の違いを感じた出来事でした。

 

ABOUTこの記事をかいた人

Kubo Keiichi

慶応義塾大学卒業後、電通に入社。2012年に電通のカナダ支社に駐在員として赴任。帰任命令が出たものの、カナダの教育や生活環境に惚れ込んだ為、電通を退社して、移住を決断。現在は電通のカナダ支社にInternational Development担当のVice Presidentとして勤務。