同じ単語でも違う解釈。日本とカナダの「働き方の差」が英語にも出ている??

海外企業とのプロジェクトで、外国人担当者とスムーズにコミュニケーションをしていたにも関わらず、途中で色んなことが噛み合わなくなって来た、と言う経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。その原因は、もちろん、働き方や文化の違いによることが多いかと思いますが、私が体験した「同じ英単語を使ってコミュニケーションしていても、そこに込められた意図や考え方が日本とカナダでは違う」という例をご紹介したいと思います。

プレゼンテーションは約束? それとも、オススメ?

以前、某日系クライアントのグローバル広告制作の競合プレゼンに参加した時のこと。我々の案が最終的に勝ち残り、さぁこれからプレゼンした案を制作する、という段階になり、とある事情により、我々がプレゼンをした内容が、100%同じようには実施できないことがわかりました。

日本のクライアントからは「話が違う」、とクレームを頂戴することに。

最終的にはクライアントにもご満足頂けるキャンペーンとなり、結果的には我々にとっても、クライアントにとっても良い広告とすることができたのですが、このトラブルが起きたそもそもの原因は日本とカナダでPresentation(プレゼンテーション)という単語に対する「考え方や意味」の違いがあるからです。

というのも、ものすごく一般化して言えば、日本でクライアントに何らかの「プレゼンテーション(Presentation)」をする時は「プレゼン=約束」であり、「提案内容は必ず実施可能であると約束されていること」という前提がクライアントにも提案側にもあるかと思います。

それが、カナダの場合、「Presentation = 約束」ではなく、あくまでも「オススメの提案」であり、「提案が採用された後も、ベストなプロジェクトになるように、クライアントも提案者もお互いに内容をブラッシュアップしていきましょうね」ということが前提になっており、言い換えれば「(ディテールは置いておき)アイデアのコアのみ」をクライアントに提案するもの、という感覚があります。

ですので、カナダ人的には、日本のクライアントから「プレゼン時と話が違うじゃないか!」と指摘されても、「いや、あれはプレゼン時のアイデアですから、変わるのは自然なことですが。。。むしろ、変わって良いアイデアになっているでしょ!」という気持ちなので、噛み合いません。

実はSchedule(スケジュール)やEstimate (見積り)という単語にも、解釈の違いが!

 

同じような例は、Presentationだけでなく、Schedule(スケジュール)や見積り(Estimate, Quotation)についても言えます。

(これも完全に一般化して書きますが)、カナダにおいて、スケジュールというものは、何か前提や事情が変れば、変更することが当たり前、という感覚であり、例えば制作スケジュールを組む際にも、ミニマムに必要な日数を想定してスケジュールを組みます。予期せぬ事態の発生を事前に盛り込むことのない、予備日なしの至極シンプルなスケジュールです。

これが日本だと「クライアントに提出するスケジュール=大きな状況変化が無い限り、必ず守るべきもの」という感覚があるので、スケジュール制作の際は、後でトラブルにならないように、関係者すべてが、それぞれで、余裕を持ったスケジュールを組む場合が多いように思います。

見積もりに関しても同様で、見積もりはあくまでも見積もりであり、見積りの条件に変化があれば、当然、見積り金額が変更になる前提のカナダに対して、日本では、感覚的には「見積り=約束」であり、業務進行過程で「よっぽどの大きな変化」が無い限り「そこはうまくやってよ」と、見積もり金額が都度、変更になることはあまり無いように思います(くどいですが、とても一般化しています)。

働き方の違い、という視点で考えてみると…

日本とカナダのどちらが良いとか悪い、ということでは無く、単純に、同じ英単語を使っていても、その定義や意図が違うことがある、という話なのですが、「カナダと日本の働き方の違い」という観点で見ると、カナダの場合、必要以上の忖度(?)をすることなく、スケジュールであれば、最短のスケジュールをシンプルに組み、場合によってはスケジュール表を作成することも無く、メール本文に書いてクライアントにご提案。以上、おしまい。「メール送ったので、帰りま〜す」と。余計なこと(?)をすることなく、最低限の労力のみです。

これが日本の場合には、わたしの経験で言うと、予備日を多く見込まれたスケジュールを受け取ったクライアントから「えっ、そんなに時間がかかるの?」、「もっとスケジュールを詰めてよ」と不満を言われ、「実は、そのご指摘は想定の範囲内です!」と心の中で呟き、事前に大幅に組み込んでいた予備日を「すこーし」減らした改訂版スケジュールを綺麗にパソコンで仕上げて再プレゼン。それでも「もっと、縮めてくれ!」とクライアントからの要望は続き、協力会社も交えた会議を重ねる結果、最終的には関係者がそれぞれ貯金していた「予備日」が見事無くなり、実は始めから存在していた「本当のシンプルスケジュール」にたどり着く。この間、関係者の多くの時間が使われ、バージョン違いのスケジュール表の山ができあがる。

見積りも同様で、バッファーを多く見込んだ見積書が、クライアントとの何度にもわたる折衝を経て、ギリギリまで下げられ、最終的には、ほぼバッファーなしの振出しの見積りに戻る。もちろん、この過程には多くの労働時間が費やされている。

業界や企業によってもちろん異なるので、上記は、ちょっと誇張し、ステレオタイプにしすぎているかもしれませんが、あながち外れていないのでは、とも思います。

これからの時代にふさわしい働き方は、どっち??

カナダは土地の広さの割に、人口が少ないこともあり、とても合理的なところがあります。例えば、キャッシュレス化によって現金を利用する機会が減ったことや製造コストの問題で、1セント硬貨を作らなくなりました。人口約280万人超を誇る北米第4位の大都市トロントの地下鉄の日曜日の始発は、なんと朝8:00台! 朝5:00台から始発電車が走る東京出身の私の感覚では、かなり遅い。

常に100点満点で完璧であることは求めず、できる限りミニマムな労力で仕事に取り組み、変更や必然性が発生すれば、その時にベストな方法を考える、というカナダに対して、日本は抜け漏れなく、起こり得そうなことを先回りして予想し、丁寧に、そして常に100点よりも120点であることを目指したかのようなToo Muchとも思える対応を日常的に行う。

それが、正確性や安心感、ディテールへのこだわりを生み、日本文化や日本人の強みとなっていると大いに感じ、誇りに思いますが、1〜2年後の世の中ですら想像がつかないくらいのスピードで変化し、未来を予測することが困難なこのご時世においては、完璧主義である日本の強みが、むしろ弱みとなり、必要以上に仕事を増やして、長時間労働の一因にもなっているのでは、と感じる次第です。

ABOUTこの記事をかいた人

Kubo Keiichi

慶応義塾大学卒業後、電通に入社。2012年に電通のカナダ支社に駐在員として赴任。帰任命令が出たものの、カナダの教育や生活環境に惚れ込んだ為、電通を退社して、移住を決断。現在は電通のカナダ支社にInternational Development担当のVice Presidentとして勤務。