そこまで褒める?自己肯定感を育むカナダの教育

「今日よりも明日。明日よりも明後日」と、一直線上に右肩上がりの経済成長が続き、未来が想像しやすかった時代は終わったように感じます。今は混迷の時代となったことに加えて、人生100年時代になり、われわれの子供達の生涯に、何が起きるのか全く予想がつきません。そんな時代を生きる子供たちが、楽しく充実した人生を送る為のイキヌキリョクのひとつが「自己肯定感」だと思います。

自己肯定感が強いとぐんぐん成長?

東洋経済オンラインに自己肯定感とは?について、簡潔な記載がありました。

自己肯定感(self-esteem:自尊心)は、自分のあるがままの姿を受け止め、「自分は大切な存在だ」と心から思える状態です。 

自己肯定感が高い人は、楽観的に物事を考えることができるので、少々不安であっても前向きな行動を起こすことができます。また自分の気持ちを開示することができるので、周りからのアドバイスも受けやすく、ぐんぐん成長することができます

(出展:東洋経済オンライン「自己肯定感」が低い人に現れる”残念な症状”」

経済誌でも特集される「自己肯定感」を身につける為には、子供の頃から「自分の可能性を信じている。何にでも挑戦ができる。自分はかけがえのない重要な存在である」と認識することが重要だと思います。

日本は謙遜の文化が基本にあるので、我が子を他人から褒められても、親は「いえいえ、うちの子なんて、落ち着きがなくて」とか、「算数は得意ですけど、英語がさっぱりダメで」なんて、わざわざネガティブなことを探してきて、しかも、子供の前で言ったりすることがあります。それを横で聞いている子供も、「そうか、自分はダメなんだ」というメッセージを受け取り、親が意識しないところで、子供の自信喪失につながっていることもあると思います。

音ハズレ頻発の音楽発表会で見た光景

カナダでの子育ては、自己肯定感を醸成すべく、特に子供が幼稚園や小学生などの小さい時は、褒め言葉を浴びせます。私が驚いたものの一つが、音楽発表会で見た光景です。 生徒が自分で演奏したい楽器を選んで、放課後、音楽の先生の指導の下、練習に励みます。バイオリンあり、フルートあり、打楽器あり、結構豪華です。1〜2ヶ月の練習を経て、いよいよ音楽発表会の当日。体育館には、カメラを抱えた大人たちが、我が子の晴れ姿を撮影しようと、少しでも良い撮影ポジション確保に懸命です。そして、いよいよ演奏が始まります。

♪〜 いい感じの出足です。

しかしながら、途中から「ピー、キャ〜、ドォ、バ〜ン???」

文字で表現しようがないのですが、音が外れるし、タイミングも合わなくなって来るしで「ありゃりゃ? どうした??」と会場で子供達を見守る大人たちも苦笑いです。

曲の最後までタイミングや音が合わず、バラバラなまま、演奏は終わりました。静まる会場。。。

そして、スタンディングオベーション!

えっ、どういうこと?スタンディングオベーション???動揺を隠せないまま、私も周囲につられて立ち上がって拍手です。口笛まで聞こえて来ます。

そうなんです。演奏の上手い下手じゃないんです。カナダ人の親は、みんなで練習し、発表まで行きつけた子供達の努力を評価しているんです。それもただ褒めるのではなく、スタンディングオベーションという、子供にもわかりやすい最高の表現で褒める。親たちの大歓声に照れながらも、充実して満足げな子供達の笑顔を見ると、自己肯定感はこうやった養われるんだなぁ、と実感します。

一番年下の子に、一番重要な仕事を!

 

自己肯定感の醸成は、カナダの子育ての日常でも見られます。わたしが住むコンドミニアムで、父親と6歳と4歳くらいの男の子とエレベーターに同乗した時のこと。途中の階から、買い物帰りの親子3人が乗って来ましたが、お兄ちゃんは、両手にスーパーのビニール袋を持ち、4歳の弟の手には、家の鍵と、なんと買ったばかりの卵の12個パックが。小さな両手で、大事そうに卵のパックを抱えている、その微笑ましい光景に、私が思わず「おぉ、すごいね〜、卵を持ってるんだ!」と声をかけると、父親が「そうなんだよね〜。一番重要な仕事は、一番年下のXXX(名前)がやってくれるんだよね〜」とひとこと。そう言われた、卵を持って緊張していた4歳児の嬉しそうな表情ったら、もう、たまりません。

ここで、プチトラブル。

エレベーターをこの親子の住む階に止めるには、弟が持つ自宅の鍵をエレベーターボタンにタッチしないといけません。すでに、エレベーターは動き始めています。すると、卵を両手で持っている弟が、お兄ちゃんに向けて鍵をパス。見事キャッチしたお兄ちゃんが、希望階にエレベーターを止めることに成功!それを見ていたお父さんが「Great Teamwork!」と一言。弟とお兄ちゃんの満面の笑み。

何なのでしょ、この幸せな感じ。こんなお父さんに育てられたら、自己肯定感の強い子供に育つこと間違いなしです。我が子の「イキヌキリョク」醸成に、大いに活用したい光景でした。