インタビュー特別編:カナダと日本の教育は、どっちが魅力的??

これまでイキヌキリョクでは、カナダに住む父親の目線から教育についてお伝えすることに集中してきましたが、イキヌキリョク読者の方から、著者二人の視点だけでなく、同じくカナダで子育てをしている他の方の意見も聞きたい、というご要望を頂きました。

そこで、今回は特別編として、アメリカとカナダで子育てをされている柴田さん(アメリカでは日本語補習校の先生もご経験)に、カナダの教育や子育てについて、日本との比較も交えながら語って頂きました。

「良いところを伸ばす」カナダの教育。意外な盲点とは?

ご主人のお仕事の関係で11年前にアメリカに渡り、その1年後にカナダに移住し、トロント歴10年という柴田さんご家族。奥様の麻純さんは、カナダに来てからは大学院で専門分野を学び直し、現在半導体業界で働いていらっしゃいます。娘さんの凜さんは現在カナダで高校2年生となるグレード10(補習校では中学3年生)、息子さんの謙くんは、カナダで中学2年生となるグレード7(補習校では小学6年生)です。

(久保:塩原)お子様二人はずっとカナダでの教育を受けられているのですか。

(柴田さん)はい、ずっとカナダの学校で学んでいます。日本の教育は、帰国した際に短期間の体験入学で経験したことがあります。

(久保:塩原)お子様が通っている学校について教えてください。

(柴田さん)長女は「トップス」という特別プログラムの学校に通っています。公立なのですが受験をして入学する学校です。もともとは「ギフテッドプログラム(ギフテッドプログラムやスペシャルエデュケーションプログラムの詳細はこちら https://ikinukiryoku.net/education-in-canada/special-education-program/)」に通っていたのですが、高校に入学するタイミングで現在通っているプログラムを選択しました。長男も現在ギフテッドに通っています。トロントではグレード4から12までギフテッドプログラムがあります。

(久保:塩原)お子様が受けていらっしゃるカナダの教育全般について、良い・悪いと感じられる点を教えてください。

(柴田さん)小学生は宿題が少なく時間に余裕がある点が良いと思います。高校生になると宿題も多くなかなかそうはいかないのですが・・・。自分の好きなことや興味のあることに時間を使えると思います。

悪いところは、先生によって授業の質の振れ幅が大きい点ですね。日本の方が教科書や学習要綱などがしっかりしているように思います。良いと言われている公立学校に行っても、素晴らしい先生に巡り会えるかはわからないというのが難しいところですね。

(久保:塩原)日本とカナダの教育方針の違いについてはどのように感じられていますか。

(柴田さん)日本は全員を同じ目標まで到達させる教育、カナダは良いところをより伸ばす教育というイメージです。現在子供が通っているギフテッドも、先生が推薦する子供がギフテッドプログラムに入るためのテストを受けたり(現在は学校全体でテストを受ける場合もあるようですが)、スポーツがよくできる子供にはコーチから特別に選抜コースへの誘いがあったりと、目立った子にはさらに上を目指せる環境が用意されているという感じです。逆に、目立たなかった子やできないと思われた子は無理させずそのままということになってしまいます。

(久保:塩原)カナダの教育について不安や不満に感じている点はありますか。

(柴田さん)日本は先生方がかなり丁寧に子供をケアしてくれるので、ある程度、学校にお任せできると思います。例えば、できないことがあれば、できるようになるまで補習授業等で面倒を見てくれたりしますよね。カナダの先生は「できないことは無理をさせない」という考え方の様で、その点で不安を感じることがあります。

(久保:塩原)今までに「できないことは無理をさせない」というカナダの教育方針を実感されたことはありますか。

(柴田さん)先生に鉛筆の持ち方で相談したことがあるのですが、「鉛筆は3本の指で持てていれば心配することはないですよ」という回答が返ってきたことがあります。日本だと鉛筆の持ち方まで学校で指導してくれますよね。他にも、算数の授業で計算が苦手で次のステップに進めない子供がいれば、計算の仕方を教えるのでは無く、計算機の使い方を教えてあげるようです。計算は計算機に任せて、考え方を学ぶという方針ですね。

自尊心を傷つけない、過度なプレシャーをかけないというカナダの教育はとても良いのですが、成長度が遅かったり、たまたまやる気が無かったりした時に、本当はできる子供が「できない」と間違った方向にジャッジされてしまう可能性を考えると少し怖いですね。日本のように学校に任せてしまうのではなく、親がしっかりと子供を見て、「ここはもうひと頑張りさせよう」などと、子供自身の努力を促す必要があると思います。

(久保:塩原)カナダの授業内容について、日本とは違う特徴的な部分はありますか?

(柴田さん)色々な方が学校に来てお話をしてくれたり、新しい技術に触れたりする機会は多いようです。

(久保:塩原)授業の枠を超えた体験といった感じでしょうか。

(柴田さん)そうですね。息子の謙の場合は学校でチームを作ってレゴロボティックスの大会に出場したりするなど日本の学校ではあまり体験できないことができているように思います。

(久保:塩原)お子様の宿題の量についてはどうですか。

(柴田さん)数年前に、小学生の頃に宿題をやってもあまり効果がない、という研究結果が出たそうなのですが、それを受けて小学校では宿題はあまり出さないという方針になっていると聞きました。ただ宿題の量は先生によって違うようです。中学校に入ってからは宿題の量は増えたと思います。凜の通っている高校は特別プログラムということもあってかなりの量の宿題があります。

自由だけどシビアなカナダの課外活動

(久保:塩原)学校の課外活動についてはどうでしょうか。

(柴田さん)日本だと中学校から部活等で新しいことを始められるのが普通ですよね。カナダではスポーツの課外活動は毎回トライアウト(クラブ活動に参加できるかどうかを決める選抜テスト)があるので、スポーツができる子供はバスケ・サッカー・バレー…色々な種目に出場できるのですが、そうでない子供はどれにも出られない、ということもあるようです。つまり、課外活動で新しいことにチャレンジできなかった場合は、プライベートで習いにいく必要があります。

カナダの教育はプレッシャーをかけない方針といいつつも、最終的にジャッジするところはシビアなので、小さい頃から習い事なども親がしっかり見ておいてあげないとチャンスを逃してしまうと感じます。

謙くんは、小学生のためのプログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix」で1,019件の応募の中から、 見事、サイバーエージェント賞を受賞

(久保:塩原)友人関係は見ていてどうですか。

(柴田さん)カナダでは小学校までは親がプレイデートを設定しなければいけないので、子供同士で勝手に遊びに行くことがありません。親の目も届きやすくて良いと思います。その他は日本での友人関係と大きな差はないですね。

(久保:塩原)学校と親の関わりについてはどうですか。

(柴田さん)日本はPTAが大変そうなイメージですが、カナダは学校でのボランティア活動への参加に選択権があります。強制はされませんが、ボランティア活動に参加することで学校の様子がよくわかるのは良い点ですね。

英語の壁の克服方法は?

(久保:塩原)日本の方は英語のコミュニケーションについて興味があると思うのですが、カナダにいらっしゃってから苦労された経験はありますか。

(柴田さん)凜も謙も、カナダの幼稚園に入学した際に英語の理解がまだ遅く、少し苦労することがありました。

(久保:塩原)どのように克服されたのでしょうか。

(柴田さん)プレイデートをたくさん行って、友達同士のコミュニケーションの機会を増やすようにしました。お友達が家に遊びに来た時は、また来てもらいたくなるように、親としても色々と準備や工夫をして大変ではありましたが、英語を上達させるにはとても効果があったと思います。

(久保:塩原)日本には海外の教育に興味がある親御さんがたくさんいらっしゃいます。ご自身の経験から、英会話等についてアドバイスを頂けますか。

(柴田さん)私自身は今も英語で苦労しています。特に発音ですね。プレゼンテーションの前には子供に発音をチェックしてもらうようにしています。凜の話だと、歌で発音を勉強するのは良い方法のようです。英語の耳を作るのはなかなか難しいので、お子様が小さい頃から、気を付けてあげるといいのではないかと思います。

(久保:塩原)お子様の日本語力を維持するために取り組んでいることはありますか。

(柴田さん)補習校の勉強と、日本の漫画や本をたくさん読んでもらうようにしています。本の金額によっては割高に感じられることがありますが、きちんと読めば、本ほど安いものは無いと思っています。

カナダでの暮らし、トロントでの子育ての魅力は?

(久保:塩原)カナダでの休日の過ごし方はいかがですか?

(柴田さん)こちらは休みが長くとれるのがいいですね。今年の夏は3週間日本に帰国したのですが、わたしは2週間は夏休み、1週間は日本の支社で働かせてもらっていました。このように融通が利くのもよいところです。子供が小さい頃はあまり遠出をしませんでしたが、最近は海外へ旅行にもいくようになりました。カナダ国内もオタワしか行ったことがないので、他の都市にも回ってみたいと思っています。

(久保:塩原)トロントは多民族・多様性が特徴の一つですが、このような環境で学ぶ良い点は何だと思いますか。

(柴田さん)色々な価値観に触れられることが良いと思います。私自身は大人になって、こちらの会社で働き始めてから色々な気づきがありましたが、小さい頃からそのような体験ができるのは素敵なことだと感じています。

(久保:塩原)お子様にはこれからどのように成長してもらいたいですか。

(柴田さん)好きなことを仕事にしてほしいので、子供たちが好きなことを伸ばしてあげたいです。私自身、自分の仕事がとても好きなので、忙しくても頑張れると思っています。謙はプログラミングが好きなのでそちらの方面でチャンスを作ってあげたいですし、凜はまだ考えている最中なので何に向いているかを一緒に見つけられればと思います。

インタビューを終えて

柴田さんへのインタビューは、いかがでしたでしょうか? ボストンで日本語補習校教師の経験もある柴田さんですので、教育そのものへの強い関心、そして子供が成長していくにあたり、何がベストであるかを常に探求されている姿が、とても印象的でした。

柴田さんが言われている通り、カナダの教育は「子供が得意とすることや、興味があることは徹底的に伸ばしていくが、そうでないことに対しては、できる限り子供にプレッシャーをかけないように配慮する」面が強いと思います。

一見、良さそうなこの方針も、子供が苦手だったり、望まないことであっても、継続して努力することで、自分の世界を広げていく機会を奪っている、と考えることもでき、そのバランスが難しいところだと思います。カナダの教育は優しいようで、実際には自己研鑽が求められ、とてもシビアです。

このインタビューは柴田さんの素敵なご自宅で取材させて頂きました。取材中も、リビングで静かに集中して勉強しているお嬢さんと息子さんの姿は、何か神々しさすらありました。そして、それを愛おしそうに見つめる柴田さんの目線と会話。柴田さんの子供へ強い関心と、子育てに真剣に向かい合う姿勢が、未来を力強く生き抜く子供たちを育んでおり、教育を受ける場所が日本であれカナダであっても、親が子供の為に努力すべき道のひとつだと感じました。