AI翻訳時代に、子供に英語教育が必要な「3つの理由と勉強法」

グーグル翻訳やスカイプ自動通訳など、AIによる翻訳や同時通訳の精度は日々、向上しているようです。私も仕事で、グーグル翻訳を使うことがあるのですが、プロが書いた原稿であれば、かなり正確に翻訳が可能だと実感しています。今後、精度が上がり、スピードも早くなれば、これらのツールを使って外国人とコミュニケーションする光景が日常になる日も、そんなに遠くかもしれません。

今後、社会が更にグローバル化していく中で、英語が共通言語であることに大きな変化はないと思いますが、果たして、AI翻訳の時代には、子供達は英語をもう勉強する必要がないのでしょうか?

カナダで英語を覚えた子供をみて感じた、それでも英語学習が必要な理由と勉強方法をお伝えしたいと思います。

皆んなが英語を話せる必要は無い

外国人と英語で会話ができたり、本を読めるようになるには、相当な時間を英語学習に費やす必要があります。英語環境に住んでいるならともかく、日本に暮らし、ほぼ日本語のみの環境で、子供が英語ネーティブと同等の英語力を身につけるには、かなりの努力が必要です。

お子さんの将来を考えた時に、現時点で思いつく英語との接点が海外旅行時くらいだろうと思われる場合は、自動翻訳や通訳技術が進歩するのですから、あえて時間とお金をかけて、子供に英語を無理やり勉強させる必要は無く、2020年より小学校3年生から必修化される英語の授業で、基礎的な英語力を蓄えつつ、子供が英語に興味を持ったり、学ぶ必要性が発生した時に、集中的に行えば良いと思います。むしろ、英語教育に費やす時間や費用を、例えばプログラミングやロボティクスなど、子供が興味を持っていて将来に役立ちそうに習い事に費やした方が、遥かに良いと思います。

それでも英語を子供の頃から勉強した方が良い3つの理由

ただ、もし子供にはグローバルに活躍する人材に育って欲しい、とお考えであれば、積極的に子供に英語を勉強する機会を与えることをおすすめします。

英語を話せる、理解できる、ということは、単に語学の問題だけでは無い、と感じています。よく言われる通り、英語はコミュニケーションのツールに過ぎない為、「英語の取得=ツールの獲得」というだけのことであり、本質的には、そのツールを使って何を成し遂げたいのか、が重要だと思います。私がカナダで生活し、英語を話せない息子たちが、次第に英語を話せるようになっていく様子を見て感じた子供が小さい頃から英語を勉強した方が良い3つの理由を挙げたいと思います。

1)英語が話せれば、世界中の人に、自信を持ってコミュニケーションができる

息子の経験談ですが、英語が全く話せない中、突然、カナダの学校に通うことになり、英語によるチンプンカンプンの授業が始まります。移民が多いカナダですから、英語が母国語では無い子供に対するESLなどのサポート体制は非常に充実していますが、それでも、英語でのコミュニケーションを習得するまでの間は、友達ができず、休み時間を一人ぼっちりで過ごし、授業中も本人だけが特別な内容に取り組まされるなど、非常に辛い思いを味わっていました。そんな状況ですから、日本にいる時は活発だった性格が、引っ込み思案で暗くなり、学校に通うことが辛そうでした。ですが、子供の能力というのは素晴らしいもので、しばらくすると、英語での会話ができるようになり、友達が増えるに連れて、自信を取り戻し、日本に居た時、以上の明るい性格になりました。

このよくあるストーリーは、何も子供に限らず大人にも当てはまり、日本では堂々と胸を張って話をしているビジネスパーソンが、英語のスピーチになった瞬間に声が小さくなり、手元の原稿を棒読みし、外国人ビジネスマンとの会食やパーティーの場になると、早々に退散したり、身を隠して話しかけられないようにしている状況を目にします。

また、会議でも、英語でスムーズに話しができない故に、相手の発言を正確に理解していないにも関わらず同意してしまったり、言いたいことに合致する英単語が思いつかず、日本語で打ち合わせした場合に比べて、半分程度しか自分の言いたいことが言えず、自分の能力をフルに発揮できなかった、という経験をお持ちの方も多いかと思います。

つまり、英語ができないが故に自信に溢れる行動ができず、仕事上のパフォーマンスが落ちて、周囲から能力が低く思われる。そして、海外生活を送る上でも、他者と積極的に関わることが億劫になるため、意欲的に海外での経験を積めなくなり、ネットワークが広がらない。「英語さえできれば、もっと自信溢れる本来の自分でいられるのに」、という悔しい思いをしない為にも、子供が小さい頃から英語を勉強された方が良いと思います。

2)異文化、多様性を理解することができる

他人と自信を持って英語でコミュニケーションできることにより、友達ができ、その人間関係を通して、英語を理解しなければ知ることがなかった新たな世界が広がります。カナダは毎年30万人の移民を受け入れ、2020年には人口の約20%が移民で占められるという多民族国家です(出典:TORJA )。英語以外に主要言語だけでも20種類以上の言葉が話されているトロントでは、地下鉄車内や街で、英語以外の言葉が聞こえることは普通であり、学校においてもクラスメートの人種や宗教は非常に多岐に渡ります。また、同性愛のカップルを日常的に目にするなどLGBTにもオープンな社会です。出身国の文化や習慣を大切に守りながら生活している移民を対象に、カナダのマーケティング業界にはMulticultural Calenderというものが存在しているくらいです(出典:Megafone Media)。

英語で友人とパーソナルなコミュニケーションが可能になることで、異文化や多様性を理解し、日本語メディアからの情報のみでは知りえなかった生の情報を知ることで、自分とは違う存在を正しく捉え、世界をもっと俯瞰した目で見ることもできますし、自分自身や日本の客観的な位置を知ることもできます。

また、ビジネス面でも、エリン・メイヤー氏著の「異文化理解力」に記載がある通り、その文化が好むコミュニケーション手法や仕事の進め方を理解することで、よりストレスフリーで、効果・効率的な仕事の進め方ができるようになります。

3)日本人以外の信頼できる友人やパートナーを得ることができる

フェイスブックやインスタグラム、ツイッターなど、グローバルに利用されているソーシャルメディアのプラットフォームにより、英語でコミュニケーションさえできれば、例えば、旅先で出会った人と、その後も容易にコミュニケーションを継続することができるようになりました。

これからの社会に出ていく子供達には、日本国内に留まらず、世界中にいつでもコミュニケーションが取れる友人がいることが、人生100年時代を生き抜く際に、様々な選択肢を与えることにもなると思います。例えば、大学生の時にメキシコにいる友人宅にホームステイしたり、就職して輸出入の仕事をする際の海外進出先でのサポートを友に手伝ってもらったり、友人の紹介でボランティアで地球環境問題に取り組むグローバルなプロジェクトの一員になったり、日本で培ったノウハウを、よりニーズの高いアフリカ諸国で活用して仕事をする、などなど。

これらを可能とする友人関係の構築は、AIによる翻訳や通訳がいくら普及しても難しく、機械などを通さない直接的な英語コミュニケーションにより成立すると感じています。日本語を話さず、翻訳機を自分に向けてコミュニケーションしてくる外国人旅行者と友人関係を構築できるのか?、と想定すると、私の申し上げたい点をご理解頂けるかと思います。また、変な例え話ですが、 自動通訳機だけで会話するカップルに、恋は成就するのか、ということに近いかもしれません。

 では、子供にどうやって英語を勉強させるべきか?

冒頭にも書きましたが、子供が小学生くらいの場合、よほど親と子供の双方に英語へのコミットメントが無い限りは、学校で勉強する英語を確実に習得することで十分かと思います。

そうではなく、英語を本格的に勉強する、ということであれば、できる限り生の英語に触れる時間を 増やすしか無いと思います。しかも、できれば映画やYoutubeなどを通して生の英語を聴く、という受動的な行動のみに留まるのではなく、できる限り、インタラクティブな方法(例:帰宅後にネーティブスピーカーとのスカイプ英会話)で、とにかく英語に触れることが重要だと思います。

そして、文法や発音にこだわりすぎることなく、正しいことよりも、通じることや理解できることを重要視して、大らかに構えていた方が良いと思います。というのも、日本で聞く英語は、教科書的ないわゆるネーティブスピーカーのものですが、ここカナダで感じるのは、そんな綺麗な英語を話す人はそれほど多くなく、アクセントが強い英語がほとんどだからです。インド系にはインド系の、そして中東系には中東系のアクセントなど、それぞれの出身国による英語の発音傾向は明確にあり、私の経験でも、一度、イギリス人も交えてカナダ人と会話をしていた時に、私が英国アクセントをほとんど理解できずに困り、カナダ人の同僚に「ブリティッシュ・アクセントが強すぎて、何を言っているのか分からなかった」と言ったら、訛りの無い綺麗な英語を話すカナダ人が「私も何を言っているのか、分からなかった」と言ったぐらい、同じ英語でも様々なので、いろんなアクセントの英語に触れ、そして、自分のアクセントにも慣れてもらう、というくらい、完璧を求めて真面目になりすぎることなく、一歩引いたスタンスくらいの方が良いと思います。

また、 よく「英語が通じない」とか「わからない」という時に、英語そのものの問題よりも、話題の内容を知らなかったり、その歴史や文化背景がわからないことの方が「通じない」原因だったりすることも多く、海外に旅行したり、サイトを見たりして、英語を通して、積極的に異文化に触れることもオススメします。

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

Kubo Keiichi

慶応義塾大学卒業後、電通に入社。2012年に電通のカナダ支社に駐在員として赴任。帰任命令が出たものの、カナダの教育や生活環境に惚れ込んだ為、電通を退社して、移住を決断。現在は電通のカナダ支社にInternational Development担当のVice Presidentとして勤務。